風に立つライオン

「風に立つライオン」 著:さだまさし

さだまさしさんの代表曲「風に立つライオン」をモチーフにした物語。 「風に立つライオン」の曲内では、医療現場が舞台となっており、この曲を聞いて、医師を志す人も少なくないという、非常に影響力のある曲である。
物語の舞台は、1980年代のケニアの戦傷病院と、2011年の宮城県。
激化する内戦下と、未曾有の大震災後の悲惨な状況下で、共通の感覚を持つある二人の人物がいた。
それが、島田航一郎医師と木場恵介さん。
人に物事を頼まれると断れない性格で、「オッケー、大丈夫」と引き受けることから、「ミスター安請け合い」と言われた二人は、どんなに困難なことでも、苦心して解決しようとする。
そんな性格だから、一部の人からは「無責任だ」と非難されることもあるが、

誰よりも優しく
誰よりも温かく
誰よりも強い心を持つ二人は、どんなに危機的状況下においても、人々の心を気遣い、現場の雰囲気や周りの人々を明るく包み込んでくれる。でも、そんな二人にも、辛い時がある。
そんな時に行う、「頑張れー!」叫ぶ自分への叱咤激励。
例えば周りに辛い思いや苦しんでいる人がいて、その人の為に頑張れと応援することは、必ずしも正しいことではないと思う。
表面的な部分ではなく、人の心の奥深い部分は、そう簡単に理解できるものではないし、自分の感覚で理解してはいけないことだから。
他の人には分からないくらいに頑張っているのに、頑張れと声を掛けられても、
「これ以上何を頑張ればいいの?」
と、逆に辛くなってしまう人も中にはいるだろう。
純粋に善意で発せられる「頑張れ」には、悪意のない哀しい刃が潜んでいる。
言葉って、とても難しい…
そんな、考えれば当たり前のようなことを語りかけるように優しく諭してくれるさだまさしさんは、やはりすごい人だなと思いました。
また、麻薬を投与することで恐怖心を強制的になくし、戦場において10歳にも満たない子どもが銃を持たされたり、スイーパーとして地雷が埋められている地を歩かされたりといったことや, 東日本大震災の津波により家族・住居・生活していた街など全てを失い、心さえも壊されてしまうような状況であったこと
といった、あまりにも悲惨で悲しみ深い状況下での物語を、さだまさしさんが丁寧に裏ごしして、一つ一つの繊細な感情を柔らかく、そして優しく表現してくれている為、非常に読みやすかったです。

誰しもが、見えない何かと闘っている。
だから、僕も風に向かって立つライオンでありたいと思いました。

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